閉ざされたセカンドチャンス

 30歳を過ぎ、夢は破れた。人生での負けを認め、将来をやり直そうと考えた。ところが一旦、レールを外れた人間が、すぐに再就職できるほど、社会は甘くはなかった。誰よりも真剣に、あらゆることを犠牲にしてまで挑んだ夢だったが、そのことを理解してはもらえなかった。

いろんな会社に挑んではみたが、受け入れてもらうことは難しかった。ある時、少しだけ関心のあった、英語を使う仕事に応募しようと、電話をかけた。すると受話器の向こうの担当者は言った。「それじゃあ、君、今から言う文を英語で言ってみて! 」

いきなり言われたことで、慌ててしまい、しどろもどろになっていると、「ガチャ」と切られた。その時、心を支えていた糸も切れ、そのまま電話ボックスに座り込んでしまった。

 自分はこんなにも努力してきたのに、それを認めてくれる人などいない。それが現実だった。当時はまだ若く、自分が否定されたように思えたのだ。もはや日本ではだめかもしれないと感じ、アメリカに行くことを考え始めた。今、思えば、逃避したかったのだ。

しかし、心のどこかでは、「自分と同じように、レールから外れた人たちのために、セカンドチャンスをつくれる人になりたい ! 」とも考えていた。このことが「ソーシャルワーカーになる」という第二の夢につながっていった。

アメリカへ行くとき、私は、自分がそれまで努力してきた日々に「失敗」というタグをつけて心の奥深くに沈め、「もはや存在しなかったこと」にした。そうすることでしか、前に進むことができなかった。  夢が破れたとき、私は一人だった。あのとき、助けてくれる人がいたら、どんなに嬉しかったことか。世の中には、セカンドチャンスを探して、もがいている人々が大勢いる。誰もが、夢や理想が破れた人々を支えることができるし、彼らのために、セカンドチャンスをつくることだってできる。それがどんなに大切なことかを、あなたに理解してほしい。