PUBLICATION
論理ハンドブック

初めて出版した書籍。日本ソーシャルワーカー協会、前事務局長、筑前甚七先生の「高校生にも分かるソーシャルワーク倫理の本を!」という強い要望に応えるために、私と加藤先生(前沖縄大学学長)が原稿を書き、故長谷川先生(前東京育成園園長)のリーダーシップのもと出版までこぎ着けることができました。全員がボランティアで関わった思い出深い本です。当時、中央法規出版の新人だった有賀氏とまだ駆け出しの研究者の私のデビュー作。素敵なイラストを教え子の三木君が書いてくれました。監修は仲村優一先生です。
出来上がった原稿を加藤先生と二人で塩釜の筑前先生に見せにいったことを覚えています。癌の末期に苦しんでいたのに、丁寧に原稿を読んでくださいました。この本もいつか絶版になるだろうけれど、あの日の熱意はいつまでも心に残っています。
価値と倫理

ソーシャルワークを演習形式で教えるためのワークブック。「見えにくいけれど大切な価値や倫理を根底に据え、意識しながら実践する」というコンセプトです。当時、ソーシャルワーク演習の本がほぼなかったので、一石を投じることができたかなと思います。編集者の有賀さんが提案した表紙案を見たときは、その斬新なセンスに驚きました。
本の冒頭に、今は亡き社会福祉学の巨匠仲村優一先生の推薦の言葉があります。最初の単著なので、思い入れの強い1冊です。完成した本を有賀さんがわざわざ千葉まで持参してくれて、ファミレスで一緒に手に取り、喜んだ思い出があります。そのような本づくりができたことは、幸せだったと思います。2002年初版ですからもうすぐ20年になります。演習の素材は今も古くなっていないと思いますが、どうでしょうか?
事例と演習

この本は、私自身も長くテキストとして使用してきました。教え子たちにもお馴染みの本です。当時、様々なテキストを読んだ後、「ソーシャルワーカーの実践している姿が見えない!」と感じました。そこで、生き生きと活躍しているソーシャルワーカーたちを登場させた事例を描き、それを通して、最もシンプルなソーシャルワークのエッセンスを伝えようと書いたものです。講義形式の授業を、できるだけ演習形式でも可能なように、話し合うための質問を沢山盛り込みました。
私のお気に入りのソーシャルワーカーたちも多数登場します。前作もそうでしたが、Aさん、Bさん、とかではなく、ちゃんとした名前、個性をもったクライエントも登場します。本を書くにあたり、まずこれら登場人物の設定に沢山の時間をかけます。似顔絵を描いてみたり、ライフヒストリーを考えてみたり、そうやって生まれてきた人物たちは、その後の本にも登場してきます。そこに気づいた読者がいたらとても嬉しいなと感じます。
50の原則

将来に残したい支援者としての資質、価値、知恵を、身近な物語から紡ぎ出した1冊です。最初、こんなテーマじゃあ、企画すら通らないだろうなと思いましたが、編集者の有賀さんと私の熱量で通しました。出版後、全国を巡り、このテーマでの講演、研修、ワークショップ等をする機会がありました。そのたびに本を持参してくださった方々にサインとメッセージを記することもできました。この本によって、本当に多くの支援者の方々と知り合うことができて幸せでした。
本を書いた当時、いつかここにある価値観など、誰も大切に思わず、現実の陰に消えてしまう時代が来るのだろう…そう思っていました。そして今、そうした時代が来ているように思います。「ここに書かれてある原則は単なる理想にすぎない!」と考える支援者は、今後も増えていくだろうと思います。しかし、私たちより前の世代は、その価値を信じていたし、私たちの世代はそれを受け継ぎ、守ろうとしているのです。
理論とアプローチ

ソーシャルワーカーが臨床において知っておくべき理論やアプローチを、できる限りわかりやすくまとめた本。この本の構想を話し合っていた当時、日本語で読めるSW系理論、アプローチの本は、わずか数冊しかなく、内容も難解でした。(私自身もよくわからなかった!)そこで、現場の方々が読んで、「そうか、こういうことだったんだ」と理解が深まる本を作ろうと努力しました。問題を抱えるクライエントの苦悩、それを支えようとするソーシャルワーカーの息づかいを盛り込みつつ、理論やアプローチの重要なエッセンスを伝えたいというハードルは、非常に高く、執筆に3年の月日がかかりました。
作った当時は、「こんな本、売れるんか?」みたいな感じで、私や有賀さんにとっても実験的でした。しかし実践者の方が喜んでくれて、沢山、版数を重ねました。これを踏み台にして、次の世代の方々が、様々な本を書いてくれることを願っています。
ソーシャルワーク実習

こちらは仲間を集めてコラボレーションした実習指導の本です。分担で執筆をお願いした後、私と有賀さんで編纂しました。この本は、特定の分野だけではなく、できる限りの現場の事例を盛り込もうとしました。様々なタイプの学生、実習指導者が登場して、実習経験から何かを学んでいく様子を描いています。どの分野にも共通する原則を学ぶという意味では、ジェネラリスト養成を目指したつもりです。協働での本づくりは、いろんな意味で学びになりました。協力いただいた皆さんに感謝しています。
保育ソーシャルワーク

保育の実践について学んでみた私は、その素晴らしい実践力に感動しました。そこで保育者向けの本を書こうと思い立ち、長年、保育者だった妹にヒアリングを始めました。彼女の中から次々と出てくる物語に感動し、そのまま本に紹介したくなり、家族でタッグを組んで作ったのがこの本です。妹が事例を担当し、私がソーシャルワークアプローチを盛り込みました。親族なので、かなり深いところまで、とことん話し合い、こだわって作った本です。登場する子どもたちの名前、保育者の背景など、可能な限り現実を映し出そうとしました。保育に携わる方々が、自分たちの実践力の高さ、素晴らしさに気づいてくれたら嬉しいことです。
グループワーク

相川書房からの依頼で書いた「グループワーク」の本です。(すでに絶版かも)グループにおける各メンバーが、それぞれの個性を出しながら、関わり合い、目標に向かって進む様子を描きながら、グループワークの原則を示そうとしました。「メンバー同士が織りなす物語」に焦点を向けつつ、演習の素材も提供しています。ジェネラリスト志向が進むと、グループワークという分野は消えてしまうかもしれません。しかし、個人、家族、そしてグループを語らすして、コミュニティは語れないと思います。グループダイナミクスを目に見える形で再現することで、地域への理解が深まるのだと思います。
ソーシャルワーカーの葛藤

ソーシャルワーカーは、外的にも、内的にも、葛藤を抱えやすい職種と言えます。本書は主に、ソーシャルワーカーの内的な力を強めることで、外的な葛藤を乗り越えることを目指しました。タイトルは、「ソーシャルワーカー」となってはいますが、私自身を含め、理想と現実の狭間で葛藤を抱える、多くの人々のために書きました。―これが第1層目。しかし、本書には、第2層目、そして、第3層目…と人生の課題解決のための、多くの理論、アプローチを織り交ぜたつもりです。これらすべての層が、最終的に専門職の価値へと統合されていきます。
本書に登場する7人のソーシャルワーカーたちは、私が出会った素晴らしい支援者たちをモデルとしました。だから彼らの語りに耳を傾けてみてほしいと願っています。
この本のために、一緒に悩んでくれた若き編集者「牛山さん」に心からの感謝を伝えます。彼女の存在なしには、本書は完成できなかったと思うからです。