自己肯定感を高める8つの力 (エンパワメントの原則)

自己肯定感を高める8つの力 (エンパワメントの原則)

原則とは力

原則はあなたに力を与え、行動に促すもの。自己肯定感を高めるには、8つの力を手にする必要がある。
これらは新しい力ではない。皆さんの身体に記憶されている。確かに感じたことがある力だ。
「8つの力が、確かに自分の中に存在している!」と感じるには、もう一度、その力を体感することである。どのような経験を体感すれば、その力を思い出せるだろう?

力を体感する

私たちは普段、コンフォートゾーンにいる。自己肯定感を高める8つのの力は、コンフォートゾーンから出て、あえてリスクをとる体験により生み出される。力とは、自分で体感するか、相手に体感させるか、いずれにしても、言葉だけで説明するものではなく「感じる」「感じさせる」もの。そのためには、8つの力をワークを通して体感することが効果的である。まず私が長年、ワークショップで提供してきた懐かしい体験をここで紹介してみたい。

【ワーク】水を運ぶ

紙皿に8本の細い綿糸をつなげ、その上に、水をたっぷりと注いだガラス瓶を置き、8名のメンバーがひとつのチームになって目的地まで運ぶ。

パワーレスになると、人々は声を出すことができなくなる。
しかし「声なき声」を持っている。それを見たことがあるか?
今日私は、「声なき声」をガラス瓶に入れてきた。それがこの透明な水。

紙皿に8本の糸をつなげ、その上に「声なき声」を置き、8名のメンバーがひとつのチームとなって、目的地まで運んでみよう。

「できますか?」
「えっ、できません!」

そのようなリアクションのなか、リスクはさらに増えていく。ゴールまでの道程には様々な障害物が置かれ、途中、他のチームと空中での受け渡しを行う。

成功するためには、次の2つの指示に従おう。

私が「できますか?」と聞いたら「できます!」と声に出してみよう。
もう一つの指示は「水から目を離さないこと」

ではスタートしよう。「できますか?」
「できます!」(全員が声を出す)

スタート!

このワークショップを体験している自分をイメージし、メンバー同士のリアクションを想像してみよう。
なぜ「できますか?」という問いかけに「できます!」と応えるのだろう?
「水から目を離さない」理由は何だろう?

「糸が切れる」「ガラスの瓶が落ちる」「水がこぼれる」等、参加者は不安に直面する。しかし与えられたチャレンジに応えるには、一人ひとりが「できる」という気持ちを抱き、一歩ずつ前進しなくてはならない。この時、自身の中に眠る力が引き出され、それを実感できる。この体験から、自己肯定感(エンパワメント)の8つの力を体感できるだろう。そして、自分で感じたことは、その後、他者にも感じさせることができる。

自身に本来備わっている力を引き出すには、失敗するリスクの高い体験に挑戦し、コンフォートゾーンの外に出る必要がある。そのことを記憶しておいてほしい。

信頼と責任(役割)

信頼

責任(役割)

責任は、信頼された者が応えようとして引き出す力である。水を運ぶことから逃げ出さないのは、「他のメンバーの信頼に応えたい」という責任感からである。
責任は役割とも表せる。人は自分の役割を果たそうとする過程で力を出す。だから何の責任も役割もないなら「あなたは必要ない」ことと同じ、つまり、役割は「必要とする」こと。

3時間離れた場所に住むあなたに、「どうしても助けてほしい。あなたでないと駄目だ」とお願いするなら、あなたはやってくる。しかし「来ても来なくても、どちらでも構わない」と言ったら、たとえ目の前に住んでいても来ないだろう。私たちは必要とされる時にこそ、全力で応えようとして力を出すものである。

自己肯定感を高めようとする時、どうしたら相手がもっと自分や他者を信頼できるようになるか? またどうしたらさらに果たすべき責任や役割を得ることができるかを考える必要がある。

仲間意識と協働

仲間意識

信頼できる仲間がいるかどうかは、自己肯定感の重要な要素である。通常、友達が一人もいないのに、自分を肯定できる人は少ない。しかし一人でも友達ちがいるなら、そう思えることもある。仲間意識、つまり友達との絆を強め、「私は大切な仲間の一人だ」という気持ちを高めることが重要である。例えば、イベント等で同じTシャツを着ることでも「私はこのチームの一員だ」という気持ちを高めることができる。友達が必要なのは、若い人々だけに限らない。年齢を重ねるごとに、仲間の存在は貴重となる。たったひとりの友達の存在が人生を変えることさえある。

協働

私たちは、ただ誰かの隣に一緒に座っているだけで、仲間になれるわけではない。知り合いになれるかもしれないが、仲間にはなれない。一緒に何かをする、つまり協働の経験が必要である。どんなに小さなことでも一緒に何かをする経験を増やすなら、仲間との関係が深まり、さらに一緒に何かをしたいと思う。相手に仲間がいるかどうか考えてみよう。仲間を増やし、一緒に力を合わせて何かを行う経験を作り出していくことが、自己肯定感につながる。

目標と達成感

目標

大きさにかかわらず、明確な目標は力を生み出す。人は目標に意識を向ける過程で自らの力を出そうとするものである。自分の目標に加え、チームにも目標があれば、さらに仲間と一致して協働する原動力となる。自分のニーズを満たすほかに、誰かのために貢献できる目標があるなら、達成できたときの喜びも大きい。

相手に目標を求める場合、当然、私たち自身が目標を持つべきである。目標は生きがいにもつながる。目標という言葉は、あまりに一般的で、使い古されている感もあるが、その重要性は失われていない。

達成感

目標を達成したときに感じる特別な気持ちが達成感である。物事を達成した時、人は自己肯定感や有用感を感じ、自分が成長できたという満足感を覚える。一人だけではなく、チームで仲間と一緒に経験する達成は、さらに大きな喜びと力をもたらす。

肯定的なコトバとイメージ

肯定的なコトバ

コトバには言語、非言語の両方の意味、また肯定、否定の両方の力が含まれる。人を励まし、助け、自信を与え、心を開き、癒す力にもなれば、ナイフのように容易に傷つける力も持つ。

肯定的なコトバは、根拠なく褒めることとは少し違う。相手が努力していること、またその結果に対して、肯定的な見方による正確なフィードバックを行うことである。10個のうち5個の達成をした時、相手は5個の失敗を見つめるかもしれない。しかし5個の成功について正しく評価するよう促すことができる。肯定的なコトバは、嘘やお世辞ではない。心ないコトバは、相手に伝わらないばかりか、かえって傷つけることもある。

肯定的なイメージ

コトバは、生涯影響を及ぼす自己イメージと密接につながっている。肯定的なコトバは、肯定的な自己イメージ、否定的なコトバは、否定的な自己イメージを作る。特に、経験した出来事とコトバが結びつくとき、強力な自己イメージが完成する。

だから相手の小さな達成に対しても、肯定的なコトバでフィードバックを伝えるなら、それが素晴らしい記憶として脳に刻まれ、肯定的な自己イメージが定着し、人生を支える糧となる。

幼い頃、逆上がりが苦手な女の子がいた。クラスで最後まで逆上がりができなかった。放課後、残って何度も練習した。先生が隣で助けてくれてもなかなかできない。一生懸命努力した結果、初めて逆上がりができた。あの日、宙が回ったその瞬間、隣にいた先生が、「お前、すごいじゃないか。覚えておきな。これは世界で一番素晴らしい出来事なんだよ」と言葉をかけた。それが肯定的なイメージとして脳に刻まれた。

大人になった彼女が、ある日、小学校の脇を通り、鉄棒を目にした時、記憶が起動し次のように感じた。「ああ、また思い出した。あの日、私は世界で一番素晴らしい出来事を経験したんだ!」

もしもあの日、先生から「なんだ、やっとできたのか、お前がクラスで一番、最後じゃないか」と声をかけられていたら、「ああ、私はクラスで一番最後だったんだ」と彼女の自己イメージは否定的なものになっていたかもしれない。同じ出来事であっても、どう言葉をかけるかが分かれ道となる。

大切なことは、相手が体験した直後に肯定的な言葉を伝えることである。この時、体験とかけた言葉がつながり、強い肯定的なイメージが脳に刻まれる。